日常業務の「見えない放置」がもたらす課題とは
業務改善のヒアリングを行うなかで、企業の担当者から出てきたのがこの言葉でした。
「重要度も緊急性も高くはないが、社内で特定の人しかできない業務があって、依頼してしばらくたって確認するとまだ処理されていないということがよくあるんです」
この企業では、担当者が手が空いたときに「やってくれるだろう」と思っていたら、そのまま放置されていたということが積み重なっていました。たとえば以下のようなものです。
- 急ぎではない名刺の発注が後回しにされ、必要なときに間に合わないことがある
- 備品の在庫が切れたままになっている
- 人事異動に伴うメーリングリストへの追加・削除がなかなか処理されない
一つひとつは大きなトラブルに直結するようなものではありませんが、社員のストレスは少しずつ溜まっていました。
さらに、こうした作業は難しい処理ではなく、時間もかからないにもかかわらず、特定の担当者しかできないために不在中や繁忙期などには放置されたまま忘れられるという事態も起きていたのです。
WEBマニュアルで「曖昧な処理」を明文化
そこで企業様が取り組んだのが、これまで「わざわざマニュアルにするまでもない」と思っていた業務も含めて、すべてをWebマニュアルに整理・集約するという大胆な改革でした。
本取り組みのスタートは、社内に散在していた「非公式なノウハウ」を一つひとつ棚卸すること。経理、総務、営業事務など、各部署の業務の中に潜む「日常業務」を以下のように分類していきました。
- 誰が・いつ・どのように行うのかが暗黙の了解になっている、または明確になっていない業務
- 口頭やメモ、個人の記憶に頼って行っていた業務
- 「前任者がやっていたから」と、意味が曖昧なまま続けている処理
そして、それらをWebマニュアルとして、すぐに検索・閲覧できるような形式でまとめました。Webマニュアルの特徴を活かし、項目ごとに実施時期(例:月末/在庫確認時)や責任部署、対応の目安時間なども記載することで、手順だけでなく処理の背景も明確にしました。
これにより、「なぜその作業が必要なのか」「誰が担当者か/担当者でなくてもできることか」が見える化され、自然と引き継がれる文化が醸成されていきました。
意外な属人業務の多さに驚き、組織全体の改善に発展
Webマニュアルの整備を始めてみると、企業様自身も驚いたのが、想像以上に属人化した業務が存在していたことでした。
たとえば、
- お客様向けの資料の社内印刷設定が、特定の一人にしかわからない
- 社内でよく使う申請フォームや資料へのリンクがまとめられておらず、個人のローカルに保存されている
- 定期的に発生する業務の処理方法を、IT部門のごく一部の人しか知らない
といった、些細だけど誰かがやらなければ困る処理が日常の業務のいたるところに埋もれていたのです。
Webマニュアルを整備する過程で、こうした業務の存在が明らかになり、「だったらこれもまとめておこう」「これも追加しておこう」と、社員から自発的な提案も増えました。今では、気付いた業務はすぐにマニュアル化するという運用が定着し、業務の再現性が高まりました。
WEBマニュアルによる「日常の見える化」がもたらした効果
Webマニュアル導入後、企業様では次のような変化が現れました。
- 「あの作業、もうやってくれた?」という確認が不要に
- 属人業務の引き継ぎが簡単になり、休暇・異動時もスムーズに
- 作業手順の記憶違いによるやり直しやミスが激減
- 新入社員でもすぐに業務をこなせるように
特に大きかったのは、「緊急ではないけれど確実にやっておくべき業務」への対応が、全体として早くなったことです。放置されることがなくなり、結果的に業務の滞りが減り、関係部署との信頼性も向上しました。
また、マニュアル作成に社員が関わることによって、「なぜこれをやるのか」「やりやすい方法はないか」といった業務改善の意識も自然と高まり、日々の小さな改善活動が生まれるようになりました。他部署の業務の理解度も高まり、部署をまたいだコミュニケーションも良くなりました。
成功の鍵は「ちょっとしたことも記録する」姿勢
本事例での成功の背景には、「内容が小さい」「重要ではない」と思われがちな業務にも価値があることを認識し、記録・共有するという組織文化の変化がありました。
マニュアルというと、システムの操作説明や、法的なルールを伴う文書作成手順など、「重厚なもの」をイメージする企業が少なくありません。しかし、実際に業務の混乱やストレスを引き起こしているのは、むしろ日常の細かい処理です。
Webマニュアルを使えば、
- 1件ごとに項目として独立させられる
- タグ付けや検索機能で目的の情報にすぐアクセスできる
- 情報の更新や追記も簡単で、常に最新状態を維持できる
という利点があり、「書くことが面倒」「探すのが大変」といった従来のマニュアルの課題を解消できます。
本事例では、「どんな小さなことでも、やり方があるなら記録しておく」という習慣を根付かせたことで、マニュアルが自然に成長し続けるツールとなりました。
まとめ
今回ご紹介した企業様の事例は、「わざわざマニュアルにしなくても…」と思われがちな業務こそ、共有すれば組織全体の効率化につながるという気付きからスタートしました。
緊急ではないが確実に必要な日常業務を、誰でもアクセスできる形でWebマニュアルに集約したことで、放置や属人化のリスクを解消。今では、社員が自発的にマニュアルを育てる文化が根付き、社内の業務がスムーズに回る環境が実現されています。
もし貴社でも、「ちょっとした業務がうまく回っていない」「担当者がいないと処理されない」といったお悩みがあれば、Webマニュアルの導入が大きな助けとなるかもしれません。
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