PowerPointで作られた資料が抱える問題点
ある中堅製造業の企業様では、社員それぞれが作成した「○○のやり方」「△△の処理フロー」などのPowerPoint資料(.ppt)を共有フォルダに保存し、参考資料として使っていました。社内の勉強会で使われたスライドもあれば、まとめとして作成された資料もあります。しかし、次第に以下のような問題が顕在化してきました。
- ファイルごとにレイアウトや書き方が異なり、まとめて資料として見るにはわかりづらい
- 必要な情報を探すのに時間がかかる
- 同じ内容のスライドがあっても、それに気付けずに新たに作成してしまう(同じ内容なのに書き方が違うスライドがあちらこちらにある)
- 更新されないままになっている
- 担当者によって説明の書き方・わかりやすさにバラつきがある
情報は有用であるにもかかわらず、「どこに何が書いてあるのかわからない」「読んでも理解しにくくて結局その人に聞きに行ってしまう」という状態では、本来の目的であるナレッジの活用が難しくなってしまいます。
マニュアル化プロジェクトの始動
こちらの企業では、このような状況を改善するために「PowerPointの資料を1つのWordマニュアルにまとめる」というプロジェクトを立ち上げました。
私たちはマニュアル作成の専門家として情報整理・構成設計・リライトといった各プロセスで支援しました。
まず行ったのは、既存のPowerPoint資料の棚卸しです。全ファイルに含まれている項目を一覧化し、重複する内容、古くなっている情報、内容の精度が高いものなどを分類。次に、業務の頻度、各項目の関連性、読む人にとって理解しやすい順序を意識して企業の担当者様と一緒に目次の見直しと再設計を行いました。
情報の再整理と統一フォーマットの導入
マニュアル化において重要なのは、「見た目の統一」と「わかりやすさ」です。今回の事例では以下のポイントを重視して再構成を進めました。
- 業務カテゴリごとに章立てを整理
- 各業務を「目的」と「手順」、補足情報として「注意点」「関連資料」などを整理して記述
- 図やスクリーンショットを挿入し、強調のための枠や吹き出しを付けるなどして視覚的な理解を促進
- 用語や表記のルールをガイドラインとして明文化
これにより、今まで個人ごとにばらばらに記載されていたノウハウが、一貫したスタイルとフォーマットで整えられたため、誰が読んでも理解しやすいマニュアルが完成しました。
Wordマニュアル化の成果
マニュアル完成後、企業様からは以下のような成果が報告されました。
- 項目が整理されたこと、および1つのファイルになったことで検索にかかる時間が大幅に短縮
- 属人化していたノウハウが共有可能に
- 誰が見てもわかるため、中堅社員の参考資料としても、新入社員の教育資料としても活用できる
- 既存の資料を活用できたので、ゼロから作るよりもコストを抑えられた
- シンプルな構成にしたのでWordに詳しくない人でも更新が容易で、常に最新情報を維持できるようになった
特に評価されたのは、「整理された構成と統一されたフォーマットが、読む側の負担を減らした」という点です。また、PowerPointでは表現しづらかった文章での解説も、Word形式であれば無理なく盛り込めたことが功を奏しました。
今後の活用と運用体制の整備
マニュアルは作って終わりではなく、「継続的に更新・運用してこそ意味がある」ものです。企業様では、今回のWordマニュアル完成を機に、以下のような運用ルールを新たに整備しました。
- 随時更新の他に、定期的な見直しのタイミングを制定
- 更新履歴を管理し、変更箇所がすぐにわかるように
- 項目を追加する際の追記ルールを策定
- 誰でも編集できるよう、権限を整理した社内共有システムを活用
こうした運用体制が整ったことで、マニュアルは「一度作って終わりの静的な資料」から、「常に進化し続ける業務の羅針盤」へと変わりました。
まとめ
今回の事例は、既存のPowerPoint資料という「資産」を活かしつつ、情報の見える化と共有の仕組みを整えることで、業務効率と教育効果の両方を高めた好例です。単なるファイルの統合ではなく、「読む人にとって使いやすい」「更新しやすい」マニュアルを作ることが、業務全体の品質向上につながるのです。
もし貴社でも、散在するPowerPoint資料を活用したい、マニュアルが整っていないといった課題があれば、ぜひ一度ご相談ください。株式会社シーブレインは、豊富な実績を基に貴社の課題に最適な改善提案をいたします。